日本財団 図書館


 

を実施されたことはない。それは、金探の本来の業務形態によるもので、陸上の金属資源探査に関しても、独自の調査を実施される例は希(まれ)で、主として国と実施機関との間にあって、成功の可能性の高い事項を判別して財政投融資の中から資金を貸し付ける作業を行っておられるからである。
?第2白嶺丸の建造と運航
白嶺丸は1974(昭和49)年度から調査を開始した。
第2白嶺丸の運航開始は1980(昭和55)年度からである。それまでの6年間の第1年目は、地質調査所が、太平洋中央海盆のマンガン団塊調査(100日)と、日本周辺大陸棚の海洋地質学的研究(100日)を実施した。計200日の航海日数である。
第2年目がらは、深海底鉱物資源開発協会(DOMA)が加わり、毎年90日をかけてハワイ東南方のいわゆるマンガン銀座におけるマンガン団塊調査を行った。この段階で地質調査所のマンガン団塊調査は40日減少して60日になった。日本周辺の地質調査所による調査は年100日変わらずである。したがって第2年目以降の年間航海日数は250日となった。
この頃、深海底鉱物資源が世界的に大きな注目を集めていた。米国は豊かな天然資源に恵まれてはいるが、マンガンだけはほとんど輸入に頼っている。陸上のマンガン資源の主要供給源の大きなものはアフリカ大陸に分布する。それがソ連の影響の強い政府の手に握られるような情勢が生じたこともあった。東西冷戦の偏りで、米国は深海底のマンガン団塊を採取して、そこから自国のマンガンの供給を行うことを考えついた。
マンガン団塊の海底資源としての開発の火付け役は、こうした当時の政治・経済の在り方の背景から考えると明らかに米国であろう。
日、独、仏、ソ連、インドなどがマンガン団塊の調査に乗り出した。
国連海洋法条約の進み方がら見ても、ある区域に対して詳細な調査を実施していた国が、国連の「国際海底機構」に、いわゆるある程度の上納金を納めても、開発の先取権を取れる可能性が濃厚になってきた。
我が国もこうした当時の情勢を踏まえて、白嶺丸のほかに海底鉱物資源調査船を更に1隻、追加建造する考えを纏めた。
今回は、国としての本船の建造・運航企画担当の中心は通産省・資源エネルギー庁海洋開発室となった。
オーナーは白嶺丸と同じく金探である。
白嶺丸の初期段階の成功が、こうした発想を促進したというのが実相であろう。
白嶺丸の場合と同じく、まず、通産省の海洋開発産業研究委員会を母体として「探査専用船建造専門委員会」が組織された。委員長は高木津漁船協会会長である。委員は14名。私も再び委員を仰せつかった。
この委員会は1976(昭和51)年6月14日から8月13日まで5回の会合を重ね、探査専用船の基本的な設計を終えた。マンガン団塊を主とする深海底鉱物資源の探査と採取に焦点を絞り込んだ設計に徹した。
この船についての通産省の中心である、資源エネルギー庁海洋開発室は、上記の基本的な設計に基づいて、再び漁船協会に依頼して概略仕様書を作り、昭和52年度の概算要求を行った。
この段階を経て、白嶺丸建造時の例に倣い、金探では探査専用船建造本部を設け、前回同様、池田理事が本部長となられた。これは後に栗林理事、保阪理事に引き継がれた。理事長は引き続き平塚保明氏であった。
今回は金属鉱業事業団と漁船協会の間で、昭和52年7月29日、基本設計図等作成業務の委託契約が結ばれた。そこで漁船協会では高木津会長を委員長とする「金属鉱業事業団探査専用船委員会」を設けた。委員数11名。私も委員の1人として参加した。
1977(昭和52)年9月9日から10月28まで会合を重ねて案を纏めた。3つの専門委員会も設けられた。
予算もついた。ただし設計・建造を通して4年間に亘る債務員祖行為とされた。
白嶺丸の場合と同じく、入札に数社の造船所から応募があった。1977(昭和52)年12月19日、入札が行われた。今回も三菱重工業が落札した。その金額は、38.85億円であった。担当する造船所は、前回同様、調査・研究船建造のノウハウを蓄積している下関造船所とされた。
着工がら竣工に至る日程は次のように進行した。
1978(昭和53)年12月6日 起工
1979(昭和54)年10月25日 進水
1980(昭和55)年5月30日 竣工引渡し
進水に先立って本船は「第2白嶺丸」と名付けられた。
予算が債務負担行為で組まれたために、契約がら竣工まで足掛け4年の長期に亘っているが、建造にかかった実質的な期間は約1年半である。
写真−3に、竣工当時の第2白嶺丸の姿を示す。
本船の主要諸元と特種設備は以下のようになった。
全長 88,837m
垂線間長 80,500m

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION